2020年6月5日

新型コロナウイルスが世界経済に与えた影響とは?

※本記事は下記の記事を翻訳し、一部修正を加えたものです。
https://www.semrush.com/blog/market-winners-losers-coronavirus/

新型コロナウイルスの突発的な発生により影響を受けた産業

新型コロナウイルスの突発的な発生により世界中の公衆衛生や健康・福祉だけでなく、人々の行動様式や生活習慣にも大きな影響を与えています。こうした影響は世界経済全体に波及し、混乱に陥っています。
これまでの経済崩壊と同様、ある産業は転落し、またある産業は繁栄します。新型コロナウイルスとて、例外ではありません。
SEMrushは新型コロナウイルスが人々のオンライン行動に与えた影響を分析し、良い影響を受けた産業、悪い影響を受けた産業を明らかにしました。

新型コロナウイルスの経済面でのポジティブな影響

検索データとトラフィックトレンドから見る、好影響を受けた産業

リモートワークプラットフォーム

パンデミックと自己隔離の中にあって、間違いなく利益を獲得したのはリモートワークツールやプラットフォームを提供する革新的な企業群です。
ビデオ会議やウェビナー向けのスペースを提供するZOOMコミュニケーションズの株価は3月16日時点では108ドルでしたが、3月23日時点では162ドルまで急伸しました。50%もの成長はそれだけでも驚くべきことですが、株式市場全体が30%以上低下していたことを考えると、異常な成長であることがわかります。世界的な危機的状況にあって、正真正銘のサクセスストーリーと言えるでしょう。3月の1ヶ月間で、ZOOMのウェブサイトのトラフィックも6,700万程度増加しています。
2月から3月の間に、ZOOMの検索ボリュームも1,562%増加しました
メッセージプラットフォームにおいては、Slackのブランド検索が2月から3月の間で82%増加しました。一方で、マイクロソフトTeamsは1,014%増加しました。以下が我々が分析したリモートワーク関連サービス全体の検索トレンドの推移です。
雇用の不確実性が増している中で、それを埋め合わせるようにオンラインの検索も増加しています。SEMrushは3月の1ヶ月間を対象にindeed.comの検索結果を分析し、最もトラフィックが多いページを明らかにしました。
上位15ページのなかで、5位にランクインしたのは ”remote jobs (リモートワーク)” (indeed.com/q-remote-jobs.html) で、1ヶ月間で合計2万2900を記録しました。これに肉薄する形で8位にランクインしたのは ”work from home jobs (在宅勤務)” (indeed.com/q-work-from-homw-jobs.html) で、隔離が進む中で新しい需要が生まれてきていることが示唆されます。

ホームフィットネス

世界人口の1/3に当たる人々がロックダウンの対象になり、部分的にまたは完全に自宅隔離されました。SEMrushのマーケットデータによると、自宅におけるエクササイズに関するオンラインの検索が増加しており、3月に突出したことがわかりました。以下は、SEMrushが調査したホームフィットネス関連キーワード全体の検索トレンドです。
3月には ”jump ropes (縄跳び)” の検索ボリュームが123%増加しました。”yoga (ヨガ)”の検索は811%と際立った増加を見せ、”fiteness mats (フィットネスマット)” は511%、”dumbbells (ダンベル)” は397%増加しました。

動画ストリーミングプラットフォーム

SEMrushの調査によると、3月にはいくつかの大手ストリーミングサービスについての検索が類を見ない増加を記録し、平均で87.6%上昇しました。2月と比較すると、Disney+(※1)の検索が232%増加しました。Disney+は昨年リリースされたばかりですが、ストリーミングサービスの第2波の競争において先行しています。
HBO(※2)のブランド検索も84%増加しており、同サービスが保有する3月の主要タイトルに起因すると考えられます。競合に対して比較的伸びが少なかったのはNetflixで、83%に止まっています。最も驚異的な増加を見せたはKanopy(※3)でブランド検索は122%増加しました。
(※1)ウォルト・ディズニーが提供する動画配信サービス。日本では2020年後半にサービス開始予定 (※2)アメリカのケーブルテレビ放送局 (※3)米・Kanopy社が提供する、映画やドキュメンタリーを提供する公共図書館や大学向けのオンデマンドストリーミングビデオプラットフォーム

オンラインギャンブル

屋内で過ごす時間が増えてきている一方で、ギャンブル産業が成長しています。4月9日付のSydney Morning Heraldによると、週平均のオンラインのギャンブルへの消費額は前週と比較して67%上昇したとのことです。
SEMrushのデータによると、3月の1ヶ月間でギャンブルサイトへのトラフィックは世界全体で約9%上昇しており、オンラインのギャンブルへの需要が増加しているという懸念が事実であることを裏付けています。現状のところ、ギャンブルサイトは活況を呈しており、新型コロナウイルスによってポジティブな経済的影響を受けていると言えます。

マッチングサイト

ソーシャルディスタンスが流行語になり、リアルな場でデートをする機会はほぼ皆無になっています。その一方で、マッチングサイトへの登録が増加してきています。SEMrushのトラフィック分析によると、マッチングサイトのトラフィックは1月から上昇し続け、3月のトラフィックは2%増加しました。
あなたはTinder(※4)で右にスワイプしたり、左にスワイプしたりするかもしれませんが、いずれにしてもデスクトップ版Tinderサイトのトラフィックは6.24%も上昇しています。同時に、badoo.comのトラフィックが3.35%、ourtime.comは6.5%上昇しました。
(※4)Tinderはアメリカのマッチングサイト。異性の顔写真が表示され、ユーザーは気に入った異性を右にスワイプし、パスする場合は左にスワイプしてマッチングを成立させる。

フードデリバリー

ロックダウンの最中にあって、自炊に前向きではなかったり、かといって食料品店に買い物に行くのも気が引ける類の人々がどの国にもいるでしょう。こうした人々はアプリを介して弁当のデリバリー注文を取ったり、地元のレストランで持ち帰りオーダーをしています。
会社にもよりますが、フードデリバリーサービスの検索は平均56%上昇しました。Amazon FreshとInstacart(※5)が最も大きな伸びを見せ、200%の上昇を記録しました。
またSEMrushの分析によると、日本国内において「オンライン 宅配」というキーワード検索ボリュームが1月から3月にかけて約3倍に増えたことが分かりました。「ネットスーパー」とういキーワードも検索ボリュームが約2倍に増え、日本国内でも宅配サービスへの関心が高まっていると考えられます。
(※5)米・Instacart社が提供する生鮮食品のデリバリーサービス

株価

金融市場の状況は目まぐるしく変わりますが、多くの国において株価は類を見ないほど下落しました。3月には世界中で取引所へのトラフィックが18.6%上昇し、グローバルでの金融市場がいかに混乱していたかを示すものになっています。
最もトラフィックが上昇したのはプラハ証券取引所で、206.68%の上昇を記録しました。一方、NASDAQは比較的安定しておりトラフィックの上昇は2.97%に止まりました。
NASDAQ銘柄の中で特に興味深いのは、Tesla、ウォルトディスニー、アップルです。
以下のデータはNASDAQウェブサイトの3月におけるトラフィック上位のページを表したものです。

オンライン講座

多くの人々がロックダウンや隔離下に置かれる中で、オンライン講座への関心が3月になって急上昇していることに特に驚きはないでしょう。
https://public.flourish.studio/visualisation/1866369/
調査結果を見ると、ユーザー行動が激変しGoogle検索結果に大きなインパクトを与えたことがわかります。通常であれば、仕事・教育領域のキーワードの検索結果変動はフラットになります。しかし、3月末から4月初めにかけて、大きな変動が見られました。

子供向けのオンライン講座

子供向けのオンライン講座やトレーニングを提供するウェブサイトのトラフィックは3月に29.31%上昇しました。
最もトラフィックが上昇したのはKhan Academy(※6)で、3月のトラフィック上昇率は48%でした。例えば、デリー政府 (インド) は学校教育のオンライン化にあたって、Khan Academyとリモート学習プログラムにおける協業の検討を始めています。
(※6)2006年にサルマン・カーンにより設立された教育系非営利団体

レシピサイト

世の中には最高のレシピを教えてくれるウェブサイトが沢山あります。パスタの作り方からフランス料理のフルコースまで、自宅のキッチンでよりどりみどりの料理を作ることができるのです。
今日のレシピサイトにおいて特に優れているのが、ユーザーフレンドリーであること、テキストや動画で手取り足取り工程を教えてくれることです。
家庭において新しいレシピを学ぶ需要は常に高い状態にあり、レシピサイトやレシピ動画へのトラフィックは6%上昇しました。
上記の4サイトについてはトラフィックが増加しただけでなく、ユニークユーザー数も増加しました。

新型コロナウイルスのポジティブな経済的影響

現在の経済的な混乱の最中にあって、多くの消費者向け小売企業が利益を得ています。
・新型コロナウイルスのワクチン開発にも取り組む医薬品会社のModernaの株価は、$18 (2月21時点) から $32 (3月18日時点) に上昇しました。
・掃除用品を販売するCloroxの株価は$157 (3月12日時点) から $200 (3月17日時点) に上昇しました。
・食品卸売会社のCostcoの株価は $281 (2月28日時点) から $320 (3月4日時点) に上昇しました。
子供の頃、両親から「どうせ時間が無いんだから」という理由で犬を飼えなかったことが何度となくあるでしょう。また、「どうせほとんど家にいないでしょう」という理由で子猫を飼えなかったことも数えきれないほどあるでしょう。アメリカではこのお決まりのエピソードはすっかり逆転し、ロックダウンの中、家でペットを飼おうとしている人が増加の一途を辿っています。
https://public.flourish.studio/visualisation/1866441/
3月12日と3月28日の間で、”adopt pet (ペットを飼う)” 、”adopt dog (犬を飼う)” 、”adopt cat (猫を飼う)” というフレーズの検索ボリュームは300%増加しました。ここからは、辛い時期にあって、少しでもペットから癒しを得たいという欲求が垣間見えます。

Wikipediaブーム

真贋の見極めは必要ですが、世界最大のオンライン百科事典Wikipediaのトラフィック上位記事は新型コロナウイルス関連で埋め尽くされました。

新型コロナウイルスのネガティブな経済的影響

航空会社

・危機が拡大し始めると、航空会社の株価は2月19日から2月27日の間に19.1%下落しました
・2月20日に$80だったユナイテッド航空の株価はちょうどその1ヶ月後に$21まで下落し、実に74%近い下落幅になりました。
SEMrushのデータによると、大手グローバル航空会社についてのGoogle検索ボリュームも低下しました。1月から2月にかけて業界全体のブランド検索は17%下落し、続く2月から3月にかけては7%低下しました。3月に最も影響を受けたのはオーストリア航空 (- 83%)、カタール航空 (- 49%)、エアアジア (- 45%) でした。
航空会社関連のトラフィックや検索データと財務データには必ずしも関連性は見られませんでした。何百万ものユーザーが何時間も航空会社のウェブサイトに滞在しており、絶えず旅行計画を変更しているためです。
2月から3月にかけて、航空会社はソーシャルメディアで積極的に活動していました。SEMrushではTwitterの感情分析を行い、人々の航空会社に対する反応を分析しました。
3月にツイートされた数が最も多かった航空会社 Top 10:
上記のリスト、データから全ての航空会社において、ネガティブなツイートよりポジティブなツイートの方が非常に多かったことがわかりました。1社だけ例外はアリタリア航空で、パンデミックの中心地であったイタリアに本拠を置いているため妥当と思われます。
最もネガティブなツイートの量が多かったのはルフトハンザ航空でした。また、最もポジティブなツイートが多かったのはカタール航空で、次いでサウスウエスト航空 (アメリカ)、ターキッシュ航空、SAS (スカンジナビア航空) となりました。
7つの航空会社に対しては国旗の絵文字が使われており、愛国心が表現されていました。ターキッシュ航空、スイス航空、LOTポーランド航空、バルティック航空、アエロフロート・ロシア航空、オーストリア航空については、各国を代表する航空会社として愛国心やサポートする気持ちを表現するツイートが多く見られました。

イベント産業

新型コロナウイルスの悪影響を強く受けているもう一つの業界がイベント産業です。国際会議や音楽フェスティバル、マラソンなど世界中の大規模イベントが中止されるか、または延期されました。
SEMrushはソーシャルメディアを分析し、Twitterにおいて最も白熱し落胆を招いたイベント中止情報を明らかにしました。最も話題になっていたのはスポーツイベントで、次に多かったのは音楽フェスティバルでした。
調査によると、Ultra Music Festival (ウルトラミュージックフェスティバル)、SXSW (サウスバイサウスウエスト)、Coachella (コーチェラ)、F1など2020年に予定されていた目玉イベントが特にオーディエンスの共感を集めていました。
UltraとSXSWはチケットに対する払い戻しを曖昧にしたことで、音楽ファンの間でネット上の議論を巻き起こしました。
議論がSNSでいかに注目されたトピックだったかは、Ultraに関する2,000以上のツイートでお金 (U+1F4B8) の絵文字が使われていたことからも明らかです。
その他の絵文字の中で最も多用されたのは泣き顔 (U+1F62D) の絵文字で、イベントのキャンセルや延期に対する落胆の表現として使われていました。

ホテル

ホテルやリゾート、クルーズ船の株価は2月10日から2月27日の間で平均して22.2%下落しました。
Carnivalの株価は2月20日時点で$43の高値を付けていましたが、3月18日には$12まで下落し、72%もの落ち込みになりました。
同様に、2月から3月にかけてグローバルの主要ホテル会社に対するブランド検索ボリュームは平均して33%下降しました。最も大きな下降が見られたのはPark Inn by Radisson (ノルウェー) (- 55%)、Kempinski (ドイツ) 、Crowne Plaza (イギリス) 、Sfitel (フランス) 、ディスニーリゾートホテルでいずれも45%近い下落になりました。

天気予報サイト

今の状況では、外に出る前に天気を調べるという習慣が、あまり意味を持たなくなっているでしょう。ロックダウンしているときに、誰が天気を気にするというのでしょうか?
しかし、世界的なパンデミックの中でも天気予報サイトのトラフィックはわずかな減少で済んでいます。天気予報サイトが3月に失ったトラフィックはグローバル全体で見て、わずか平均0.4%程度でした。
SEMrushの分析によると、最もトラフィックが多い天気予報サイトであるweather.comは3月の間に約4%のトラフィックを失いました。また、月間の推定平均広告費も5.98%減少していました。この傾向は他社でも同様で、Accuweatherの同期間における広告費も12%減少しました。

レストラン

ソーシャルディスタンスがルールとなっている現在の状況下では、もはや地元のレストランで食事をすることはできません。もしお気に入りのレストランがデリバリーサービスを提供していなければ、大好きな食事にありつく機会はほとんど無くなってしまうでしょう。
しかし、レストラン業界は明確に対応を始めており、多くのレストランがウェブサイトに「デリバリー受付中」のメッセージを掲げています。レストランのオーナーが生き残るために、いかにビジネスを変革しようとしているかが分かるでしょう。
最も多くの影響を被ったサイトを調べてみると、OpenTableがトラフィックの11%を失っていました。これは、オンラインでレストラン予約しようとする人々が減っているためと考えられます。興味深いことに、マクドナルドさえもウェブサイトのトラフィックを2%失っていました。

検索における新型コロナウイルス関連のニュース

Googleは新型コロナウイルス関連のクエリに対して、検索結果を変えています。数週間の間に、シンプルだった検索結果が変更され、ページ全体にSOSアラートが表示されるようになりました。「新型コロナウイルス」の検索結果には複数のSOSアラートが表示されており、アメリカでは3月23日以降、ヘルプや最新情報、予防に関する情報などが掲載されるようになっています。
「coronavirus」のGoogle検索結果のスナップショット。新型コロナウイルスのアラートやナレッジパネルが表示されており、クリックできるセクションやよくある質問、メディアが発信する最新ニュースを確認できる
SEMrushはアメリカの最もポピュラーなメディアプラットフォーム30社を調べ、新型コロナウイルス関連のニュースで最もトラフィックを獲得しているサイトを明らかにしました。The New York Times、NBCの両サイトがGoogle検索結果の上位に安定しており、新型コロナウイルス関連のオーガニック検索結果の1ページ目に40回出現していました。NBC Newsは検索結果の1位に36回も出現していました。
平均すると、新型コロナウイルス関連のキーワードはメディアサイトの検索順位を4つほど上げていました。SEMrushの推定によると、3月におけるアメリカのトップメディアのトラフィックは少なくとも11%上昇していたと考えられます。
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新型コロナウイルスの突発的な発生は、人々の想像を遥かに超える最悪の事態に陥っています。我々SEMrushはあらゆる国々において、困難でストレスフルな時期にあることを理解しています。この危機を乗り越え、皆が回復への道のりを進む時が来たら、我々は率先してお互いを助け合い、世界中で負った経済的なダメージを修復することに注力することになるでしょう。
そのためにまずは、「Stay home, Stay healthy (家にいましょう、健康でいましょう)」! SEMrushでは引き続き、最新の調査結果やオンラインの検索トレンド、感情分析などグローバル経済の変動を捉える重要な情報を発信していきます。
著者:
Olga Andrienko (オルガ アンドリエンコ)
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Olga AndrienkoはSEMrushのグローバルマーケティング部門責任者です。彼女はチームを率いて、オンラインマーケティングに関する世界でも有数の力強い国際的なコミュニティを構築してきました。また、50か国以上の新規参入市場でSEMrushのグローバルなブランド認知を拡大してきました。Olgaはアメリカ、イギリス、ヨーロッパにおけるコンテンツおよびソーシャルメディアに関する授賞式の審査員も務めています。また、2018年にはTop Rankよりデジタルマーケティングにおける最も影響力のある女性25人にも選出されました。著名なマーケティングカンファレンスの登壇歴もあり、ユーザー行動に関する彼女の発言はBusiness InsiderやWashington Postにも引用されています。