SEOのプロが語ったSemrushを選ぶ理由
SEO業界を10年以上にわたってリードしているアイオイクス株式会社。同社はレポーティングや競合調査を効率化するためSemrushを導入し、新規提案やコンサルティングに活用しているという。データからインサイトを導き、成果を上げるためのツール活用法とは?同社の本田 卓也 氏、石戸 翔麻 氏に案件での具体的な活用方法を伺った。
●インタビュー協力
アイオイクス株式会社 Webコンサルティング事業部
<事業部長>本田 卓也 氏 <コンサルタント> 石戸 翔麻 氏
石戸氏: 弊社は、SEO及びCRO (Conversion Rate Optimization) に関するコンサルティングサービスを中心に提供するインターネットサービス企業です。2002年に設立され、インターネットの黎明期から長くSEOサービスを提供してきました。これまでの実績は1,000サイトを越えていて、いわゆるSEOの老舗企業です。最近ではSEOだけでなく、CROやコンテンツマーケティング等、Webマーケティング全般に関わるコンサルティングサービスを提供しています。
本田氏: SEOというとテクニック論が先行しがちですが、本質的には”よいコンテンツを正しく検索エンジンに伝え、世の中に適切な情報を広める、あるいは顧客と接点を持つための技術”がSEOだと思います。我々はそうしたSEOの本質に立脚し、高品質なサービスを提供することを心がけ、日々トレンド変化に対応しながら技術を磨いています。
また、SEOのノウハウを提供することを目的に、SEO Japanというメディアも運営しています。Search Engine LandやSearch Engine Roundtableなど、質の高いメディアから翻訳権を取得しており、海外発の最新のSEO情報をお伝えしています。単に記事を翻訳するだけでなく、弊社からのコメントも付けています。また、翻訳記事以外にも海外のカンファレンスレポートも掲載しており、好評をいただいています。
以上のように、実務やメディア運営を通して10年以上SEOに携わってきましたので、SEMツールについても有名どころはほとんど触ったことがあると思います。
本田氏: 実はSemrushについては以前から知っていました。よく海外のカンファレンスに行くのですが、そこでスピーカーとしてSemrushの方が登壇していたり、大きなブースを出展していたりしていて、デモを見たこともありました。ただし、その時はきちんと使いこなすイメージが湧かず、結局頓挫していました。
改めて導入を検討したのは、レポーティングに使えるツールを探していたからです。以前から、調査にはAhrefs (エイチレフス) などのツールを利用していたのですが、レポート機能が無かったため資料作成などは一人ひとりが属人的に行っていました。私はかねてからこの作業が非常にもったいないと感じていて、効率化を目指してさまざまなツールを試していたんです。しかし、いまいち使い勝手が良くなかった。そこにオロさんがSemrushを日本展開するというニュースが飛び込んできて、もう一度Semrushを使ってみたんです。そうしたらレポートはもちろんですが、その他のツールも思いの外、良いモノだと分かった。今はSemrushに割と落ち着いてきています。
本田氏:新規提案時と受注後のプロジェクトで変わります。新規提案の与件整理時には、
- クライアントのオーガニック検索のトラフィックやキーワード、検索順位
- 競合ドメインがどのようなキーワードを獲得しているのか
- クライアントと競合とのオーガニックの差分、そこから逆算される伸び代
- 順位が低いキーワードがあれば、その理由は何か
- 次の打ち手(SEOの技術的な課題なのか?受け皿となるコンテンツがないのか?など
を軸に調査を進め、クライアントとディスカッションし提案内容を練っています。したがって、これらを調査した上でデータを読み解き、短時間でレポートを用意できることが重要になります。Semrushはこうしたクライアントと競合の調査、レポート作成まで完結できるので、ムダな作業が発生しません。
導入自体はレポートがキッカケでしたが、他のツールも非常に使い勝手が良かったので、いまはさまざまな調査やトラッキングにSemrushを活用しています。
本田氏:主に3つのツールを利用していて、まず1つ目に競合ドメインの発見とオーガニック検索のトラフィックを調べるために「オーガニック検索分析」を利用します。このツールはオーガニック検索で重複しているキーワードから競合ドメインをリストアップしてくれるので、特に業界知識が少ない時には役立ちます。また、競合ドメインがどのようなキーワードで何位に表示されていて、推定トラフィックがどれくらいあるのかを調べられるので、競合の全体像を把握することもできます。仮に特定のキーワードに対して競合より上位になった時に、どれくらいの流入が得られるかシミュレーションにも活かせます。
競合ドメインがわかったら、2つ目に「キーワードギャップ」を使って、競合とクライアントのキーワードの差分を調べます。このツールでは、ベン図でキーワードの重なり具合を変えながら、「競合と重複しているキーワード」や「競合だけが獲得できているキーワード」をリストアップすることができるのですが、このベン図によるギャップの表現が非常にわかりやすいです。ベン図で2つの円の重なり具合を見た後にデータを見ると、直感的にキーワードの差分がわかるので、データを瞬時に解釈することができます。そのままレポートに貼り付けてクライアントに説明できるくらいわかりやすいです。
最後に、ここで抽出してきたキーワードに対して、「Keyword Magic Tool」を活用して関連語句を調査します。このツールの優れている点は、キーワードを自動的にグループ分けしてくれるところです。例えば、「時計」というキーワードを調べると、その関連語句には「ベルト」や「修理」、「交換」などのグループがあることがわかります。このグループを確認しながら施策の対象とすべきキーワード群を大まかに把握することができます。
また、Semrushには「レポート」機能もついていて、画面上でドラッグ&ドロップしながら簡単にPDFレポートを作成することができます。このように、新規提案時の分析からレポーティングまで、ほぼSemrushで済ませています。
石戸氏: 私はコンサルタントという立場で、新規の提案時からプロジェクトまで幅広く関わっていますが、プロジェクトの定例報告時には、キーワードを定点観測したレポートを提出しています。Semrushには「Position Tracking」というツールがあって、ここで施策の対象としているキーワードの順位をトラッキングすることができます。このグラフが見やすいので、経過観察にとても役立っています。
具体的には、「平均検索順位」と「トラフィック」、「可視率」の推移を日次で追うことができます。「キーワードごとの検索順位」も重要であるため日々確認していますが、キーワードごとの検索順位とは、絶対的な位置を表す「点」のようなものです。一方、SEOにおいては「点」だけでなく「面」、すなわちサイトが全体としてどれだけのキーワードにおいて上位で推移しているかが重要で、この「面」を表すのが「可視率」です。
したがって、点と面を同時に捉えながら、狙ったキーワードの順位がきちんと上昇しているかを理解することができます。このようなレポートの見やすさは他のツールにはほとんどありません。おかしな表現かもしれませんが、見ていていろいろな発見があるので非常に面白いです。
他にも、本田と同じようにSemrushに備え付けのレポートは活用しています。細かいデータもあるので、もちろんクライアントにはきちんと分析して説明する必要はありますが、ボタンを押すだけでレポートが作れるので、いちいちパワポにグラフを切り貼りするような作業は削減できます。
本田氏: Position Trackingについて補足すると、キーワードに「タグ」をつけられるのがとてもいいですね。
本田氏: タグは、いわばキーワードのグループのようなもので、タグごとの検索順位や可視率を切り替えて表示することができます。実際にPosition Trackingを活用している事例として、時計修理屋さんのサイトがあります。時計修理には非常に多岐にわたるキーワードがあり、何百というキーワードを施策の対象としてトラッキングしなければなりません。必然的に優先順位付けが必要になります。ここで重要なことは、クライアントのビジネスに対して影響力の大きい、すなわち売上に直結するキーワードに対して優先的に施策を打つことです。
では、時計修理というビジネスにおいて特に収益性の高いサービスは何か?ーー実は「オーバーホール」なんです。もちろん、「電池交換」や「ベルト交換」などボリュームが大きいキーワードがあり、SEO上はそのようなビッグワードで上位表示されることも重要ですが、クライアントのビジネスへは貢献しにくい。したがって、まずは「ブランド名」×「オーバーホール」のような、売上にダイレクトに影響するキーワード狙う必要があるのです。当然、部品修理やその他のサービスに関連するキーワードも同時に狙っていきますが、キーワード全体で順位を追ってしまうと、施策の優先順位を誤りかねません。そこで、こうした最優先で施策を実施したいキーワードに「重要」というようなタグをつけることで、重要なキーワードだけで見たときに、きちんと順位が上がっているかを確認することができるのです。
また、ユーザーへの認知という意味では、将来の顧客に対してもリーチしておく必要があります。こうしたユーザーに対しては、「日々のメンテナンス」のような役立つ情報をコラムで伝えます。先んじて接点を作っておけば、将来オーバーホールが必要になったときに指名してもらえるからです。そこで、このような認知獲得用のクエリに対しては「コラム」のようなタグをつけ、別途順位が上がっているかを分けて観察します。このように、キーワードに優先順位をつけ、それぞれのグループごとに順位の推移を分析するためにタグを活用しています。いろんなツールを使ってきましたが、Semrushのグラフの見やすさは圧倒的です。
石戸氏: タグは縦軸と横軸を分けて運用するとイメージがつきやすいかもしれません。個人的には、SEOには縦軸と横軸があると思っています。縦軸はキーワードのジャンルやカテゴリ、横軸はキーワードの階層のようなイメージです。
これはあくまでも例えなのですが、「日本」という大きなキーワードを上位表示させるためには、東京や北海道などの都道府県でも上位表示される必要があり、都道府県が上位になるためには千代田区や札幌など、都市名や地域名で上位表示されている必要があります。このようにSEOにおいては、ピラミッドの下層(テールワード)からきちんと上位を狙う形で施策を積み上げていかなくてはなりません。ここでいう、日本 - 北海道 - 札幌のようなカテゴリを縦軸として見立て、千代田区 - 札幌のような都市レベルの階層を横軸と見立てて、それぞれにタグをつけます。こうすれば縦軸・横軸で分析できるので、きちんとピラミッドが積み上がっているのか分析しやすいと思います。
いま挙げた例は、そもそもサイトやキーワードの設計など上流工程から考える必要があるので難易度は高いかもしれませんが、特に大規模サイトなどではこのような運用も有用なのではないでしょうか。
本田氏: SERPs (Search Engine Result Pages; 検索結果) に出ている機能が確認できるのもいいですね。最近ではいわゆる「ゼロクリック検索」が増加してきていますが、単にオーガニック検索で1位になるだけでは、SEOとしては不十分です。クエリにもよりますが、強調スニペットやローカルパック、動画などSERPsの機能が表示されるように施策を考えて実行しなければなりません。
Position Trackingには強調スニペットの獲得機会があるキーワードを教えてくれるレポートがあります。さすがに人力で何百とある全てのキーワードの強調スニペットを調べることは難儀なので、こういったレポートは役に立ちます。
また、私が担当している案件には実店舗とサイトを両方持っているクライアントもいて、その場合はローカルSEOが極めて重要になります。例えばローカルパックが出ているクエリに対してはGoogle My Businessを活用して、きちんとローカルパックに表示されるように施策を行わなければなりません。Position Trackingを使えば、キーワードごとにローカルパックが表示されているか、またその順位はどうなっているかをトラッキングできるので施策の実施・効果検証の際に大変重宝します。
あと細かいですが、Position Trackingにはアプリもあって、出先でいつでも順位を確認できるので便利です。
本田氏: 感覚的には、データの背景にある状況を理解するまでの時間が短縮されたと感じます。出てくるデータだけを見れば、正直どのツールも大して変わりません。むしろ重要なことは、データを最短で理解し施策までのイメージを付けることだと思っています。その点、Semrushのデータの見せ方は直感的に理解しやすいです。分析結果をクライアントにも説明しやすく、他のツールに対する優位性があると感じています。
本田氏: 率直に一言で言うと、「楽しい」と思います。SemrushはUIがキレイでレポートも見やすいので、使うたびに新しい発見をもたらしてくれます。また、オロさんが日本語でサポートしてくれるのも助かっています。このようなサポートは海外製のツールとしては稀有だと思います。
石戸氏:SEOのコンサルタントとしては本田と同じく「楽しい」という感想を持ちます。一方で、事業会社の視点で見れば、Semrushは限りなくオールインワンに近いツールです。このツールで競合分析からトラッキング、レポートまで完結することができます。これだけの機能を月額数万円から使えるのは非常にコストパフォーマンスが高いので、事業会社の方にもおすすめできると思います。
● ありがとうございました。
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現在アイオイクスでは、SEOで培ったウェブマーケティングのノウハウを技術力、そして安定した資本力を背景に、SEOに加えてWebメディアやECサイト運営、そして新規技術の研究開発など、地味ながら将来性があると信じる分野において事業活動を行っています。
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